今回ご紹介するエンジニアの2人、田嶋 秀成(たじま ひでなり)、細谷 泰平(ほそや たいへい)とデザイナーのラタン・トゥク(Lathanh Truc)は、22年新卒入社の同期です。
3人で参加したハッカソン「SPAJAM 2022」の予選では最優秀賞を受賞。「この3人なら何でもできそう」と、和気あいあいと話す彼らはそれぞれの目標に向かいながら、個人的な活動にも励んでいます。
部署を超えて結束する様は、まさに同期ならでは。
入社から2年目のタイミングである3人に、新卒研修での出会いを起点とした社外での活動、それぞれの夢や目標、そして入社から2年目の現在地を語ってもらいました。
入社2年目の現在地、“この環境を逃したくない”と思うワケ
――昨年7月の本配属から10ヶ月が経過しました。最初の頃よりも任される業務の範囲が広がったのではないでしょうか。
細谷 泰平(以下、細谷):僕はサーバーサイドエンジニアとして『IRIAM』に配属され、関連するWebサービスや内部向け運用管理ツールの開発に携わっています。最近は新規Webサービス開発チームで機能開発を行いながら、スクラムマスターとしてチームを回す役割も担っています。
ラタン・トゥク(以下、トゥク):私は『Voice Pococha』でのプロダクト開発と、ユーザーが参加するイベント向けのグッズ制作に加え、今年から採用業務にも携わっています。あと、デザイン本部が不定期で行なっている美大向けワークショップのディレクションも任されたりで、めちゃめちゃ仕事の幅が広がりました。
――田嶋さんは学生時代から内定者アルバイトとしてDeNAでの業務経験があると聞いています。入社前後で求められる役割の違いをより感じているのでは?
田嶋 秀成(以下、田嶋):そうですね。学生の時は降りてきた業務をこなす感覚でしたが、今は自ら仕事を生み出すことを求められるようになりました。というのも、僕が配属された『Pococha』事業部は、自分が今まで経験したことがないほどの大きな規模で動いている組織です。
プロダクト自体の経過年数もそれなりにあるため、技術的負債みたいなものがどうしても発生してしまいます。リファクタリングと新規機能の開発のバランスをうまく取りながら開発しなければならない。今は問題を見つけて改善策を提案しつつ、他の人も巻き込みながら業務を遂行しています。
――入社2年目を迎えた今の率直な感想を聞かせてください。業務を通じて必要な力や素養が身についた感覚はありますか?
細谷:少なくとも、今は自分的にベストと思えるチームに配属してもらって、今のところ“間違いないな”っていう感覚があります。
トゥク:私も。DeNAを選んだのは、デザイナーがビジネスに近いところでコミットできる会社だったからです。特に『Voice Pococha』は今ちょうどユーザーが増加していて、変化していくフェーズ。その場に立ちあえていることで、得られるものがすごく大きいと思っています。
田嶋:僕も同じで、しばらくは『Pococha』に身を置きたいな、と。今の環境で学べることというか、他では絶対得られないよね、みたいな学びがすごくたくさんあるのを感じています。
こんな難しいことをやっているプロダクトはなかなかないし、それができる状況もすごく珍しいと思うので、この環境を逃したくないみたいな気持ちでいますね(笑)。
熱い想いと好奇心に満ちた同期メンバーたち
――22卒新卒全体研修に参加した際、同期メンバーに対してどのような印象を持ちましたか?
トゥク:とにかく好奇心旺盛な人が多いと感じました。
デザイナーとしてデザインの話をすると、”絵が描ける人“というイメージを持つ人が多いと思いますが、大体そこ止まり。それ以上のことを聞かれることは少ないのですが、新卒研修では「デザイナーってそもそもどういう思想を持っているの?」と、深堀った質問をされることが多くて、それがとても印象的でした。
田嶋:自分が感じたのは、自己紹介時に語られるエピソードがとにかくユニークで(笑)。職種を問わずおもしろい経験談を持っている人が多いな、と感じました。
それで言うと、細谷さんは有名人なんですよ。
細谷:学生時代やっていた競技プログラミングについての入門書を技術同人誌で書いていたんです。1500部ほど頒布したのですが、同期にその本を持っている人が数人いて(笑)。
僕がいろんな人と話をして感じたのは、みんな根底に熱い想いがあるんだな、ということです。技術に対するこだわりや知見を使って、“何か大きな理想や課題を解決したい”という想いをみんなが持っていて、それについて語り始めると話が止まらなくなるんです。
トゥク:確かに。DeNAではエンジニアとデザイナーの協働によりモノづくりが進行するので、エンジニア研修の初期段階で、デザイナーも参加する「デザインスプリント」というワークショップが行われるんです。
その時に、それこそエンジニアの思想からプロダクトにおけるデザインの実装の仕方まで、いろんな話を聞きました。みんな熱っぽく語ってくれましたね。
――同期から受ける刺激や影響が大いにありそうですね。
トゥク:たとえば、エンジニアだけど学生時代に研究していたテーマがおもしろくて、工学以外のこともやってましたみたいな人が多くて、会話がすごく楽しいですね。
バックグラウンドもそれぞれで、多様な世界を知ることができました。デザインは人類学に近いところがあるので、より多くの視点を持つことが重要だと考えているので。
みんなの知識をお借りして、自分の思考をジャンプさせることができている意味でも、すごく影響を受けています。
田嶋:自分の場合は、高卒で入社した18歳の同期がいて、もう19歳になったのかな?彼がとにかく優秀すぎて……ものすごく刺激を受けています。自分はつい怠けてしまうことがあるのですが、彼を見ているとぐうたらしていられないなって(笑)。
細谷:僕のいる『IRIAM』はDeNAの子会社ということもあり、IRIAM内で完結することが多く、自分が関わる範囲では部署をまたいで業務をする機会はあまりないんです。でも、新卒研修からの同期のつながりは部署関係なく続いていて、チャレンジの機会は巡ってくるんですよね。
このメンバーで参加したハッカソンに誘われたり。
予選で最優秀賞受賞!やり切ったハッカソンイベント
――この3人で去年ハッカソンイベントに出場し、しかも予選で最優秀賞を受賞されたとか。
田嶋:はい。アプリ開発のハッカソン「SPAJAM 2022」に参加しました。予選と本選があり、1チーム5人体制で取り組むのですが、本選に出場経験がある人はチーム内の3人までというルールがあるんです。
僕は実は2019年から「SPAJAM」に参加していて本選への進出経験もあるので、去年は自分を含めた本選経験者3人と、細谷さんとトゥクさんを加えた5人で参戦しました。
2人に声をかけたのは僕なんです。
――なぜこの2人だったのですか?
田嶋:過去の経験を踏まえると、勝つためには“チーム構成”がすごく重要なんですよ。基本構成としてはアプリをつくるエンジニアが2名、サーバサイド1名、デザイナー1名、プロダクトの建付けを理論立てするPdM1名、という5名のチームが理想的だと考えています。
今回、自分はAndroidエンジニアとしてAndroidアプリをつくるのは前提で、サーバーサイドとデザイナーを見つけるのに困っていたところ、実に理想的な人材が同期にいた(笑)。同期で“強い”細谷さん、トゥクさんの2人をヘッドハンティングしました。
――細谷さん、トゥクさんは声をかけられてどう思いましたか?
細谷:びっくりしましたが、チャレンジする機会なので、二つ返事で参加を決めました。本選に何度も出ている田嶋さんのレベルの高さや強さも知っていたので、これは勝てるだろうと(笑)。
トゥク:私もハッカソンに参加できるなんて、すごくいい機会だなと思って。全くのゼロベースからプロダクトをつくる経験はしたことがなかったのでワクワクしました。あと、予選突破したら無料で温泉旅行できるっていうのも魅力でした(笑)。
細谷:ね(笑)。第6回予選で最優秀賞を受賞できたので、本選では長崎の温泉地に行けました。約30時間ぶっ通しで作業するのがきついですが、達成感も得られたし、観光も楽しめました。ただ、本選では残念ながら優勝を逃してしまって……。
田嶋:課されたテーマに対してどういうアプリをつくるのか、予選はアイデアが固まるのが早かったけれど、本戦では時間がかかってしまったのが反省点です。
それにハッカソンといえど、やっぱりある程度品質の高いコードを積み重ねないと、最後の方で破綻してしまいがちなんですよね。自分はこの手のイベントでは基本的に一睡もしないのですが、疲れや焦りがあったのか、最後の方ではまともなコードを書けていないのを感じました(笑)。
細谷:「SPAJAM」は成果物一発勝負なのがしんどかった。品質の高いコードを書いてパフォーマンスを最大化し続ける必要があるし、機能の取捨選択とかバランスの取り方とかが難しい。でも本選では技術的にハイレベルなことにチャレンジできたし、やり切った感はあります。
トゥク:デザイナーとしては限られた時間の中でUI/UXはこだわりつつも、いかにエンジニアが素早く開発に取り掛かれるか、というところに気をつかいました。
アイデアが固まった瞬間にワイヤーを引いて機能要件だけ渡し、ベースをつくっている間にデザインを練ったりプレゼン資料の作成を同時進行したり。グループワークの中でどう立ち回るべきかをすごく意識したし、勉強になりました。
――話を聞いているだけでもヒリヒリします(笑)。
田嶋:このヒリヒリがいいんです(笑)。
ハッカソンの魅力は、実装の方針や設計など、全部自分たちの思い通りにできるところ。
審査員に評価されるかは別だけれど、バグを出しては行けない責任感や万人に受け入れられるのかなど、そういうことを考えずに、いい意味で自分勝手なモノづくりができるのがいいですね。
目標に向かって思い思いに活動中
ーーこの3人でまた何かに挑戦する予定は?
田嶋:今のところはないのですが、正直、このメンバーなら何でもできるような気がしていて(笑)。
自分が集めたチームなので手前味噌ですが、バランスのよさを感じています。ハッカソンへの参加は置いといて、まずは何か一つアプリ制作はしたいですね。それをどこかのグループウェアにあげたりして、ちょっとマネタイズしたいな(笑)。
細谷:いいね(笑)。こういう感じの延長線上に起業があるんだろうな。
トゥク:このメンバーでの起業は楽しそう!実は私は起業を目標にしているんです。
DeNAに入社してよかったポイントの1つに、同期に強いエンジニアがいること。今はエンジニアが慢性的に不足していて見つけるのが大変なのですが、粒揃いの同期がいる環境はすごくありがたいですね。
今後もこのメンバーでプロダクトをつくっていけるといいな。
ーー現在、業務以外で取り組んでいること、活動していることなどがあれば教えてください。
細谷:先ほど学生時代にやっていた技術同人誌の話をしましたが、僕はイラストを描くのが趣味で、同人での創作活動も好きで続けています。自分のポートフォリオページを持っているので、描いたイラストにCSSアニメーションを組み合わせて、イラストと融合したWeb体験みたいなものをつくったり。イラスト1枚だけでは表現できない創作活動をしています。
田嶋:僕は「SPAJAM」を主催しているMCF(モバイル・コンテンツ・フォーラム)の方からお声がけいただいて、福島県の奥会津にある只見町の中学校でIT教育をしたり、電気・情報工学分野の学会であるIEEE(アイトリプルイー)で知り合った他企業の方々と勉強会を開催して、企画を立ち上げたり。
トゥク:直近でやっていることが2つあって、1つは「CULUM(クルム)」というデザインスタジオのnoteで、外国人視点で困っていることや体験したことについての記事を書いています。
たとえば、日本では名前を書く欄が姓と名の2つしかないので、ミドルネームの扱いに苦慮することがある、といったような話題。もう1つはアンダー30の若手クリエイターを集めたコミュニティづくりや発信活動です。
ーーみなさん精力的に活動されているのですね。では最後に、今考えているキャリアパスや目標について、細谷さんから教えていただけますか。
細谷:僕自身が創作活動をしていることもあり、まずは“自分を表現し、互いに共感する喜び”をたくさんの人に知って欲しいという想いが根底にあります。
今携わっている『IRIAM』はまさにいい例で、キャラになって配信ができることはもちろん、その周りのイラストレーターやリスナーにとっても多様な表現や共感、つながりを生み出す場(プロダクト)だと思っています。表現方法は次々と新しいものが誕生していくので、常にその最前線に携わり続けていたい。起業は今のところ考えていませんが、「表現」の新たな可能性を拓いたり、そういった場を盛り上げたりするようなアイデアがあれば積極的にジョインしていきたいですね。
ーーエンジニアとしてはどうでしょう?
細谷:僕はエンジニアではありますが、技術で尖っていくよりも、それを手段としてうまく活用し、クリエイティブの楽しさを感じとれるような場をつくる人になりたいな、と。
“よりよい世界を実現する手段の1つに技術があるし、それを使って何をやるかが大切”というのが僕の信念です。プロダクトそのものに関わり続けたいので、プロダクトの方向性を決めるマネージャーやPdMとか、そういった方向に進むのがいいかもな、と今は思っています。
ーーありがとうございます。トゥクさんは先ほど起業を目標にしていると話されましたね?
トゥク:今、社会から寛容さが失われつつあるような気がしているんです。私は優しい人が社会にもっと増えてほしいなっていう想いがあって……抽象的な話なのですが、それを実現するための手段として起業を考えています。
困っている人に向けたプロダクトを提供する手段もあれば、何かしらの視点を提供して議論の場を活性化させる場づくりをする方向性もある。人をエンパワーメントできるようなクリエイターになるのが当面の目標です。
今はデザイナーとしてモノづくりにこだわりつつ、マネジメントや組織づくりなど、幅広いスキルを身につけたい。その先に起業があると考えています。
ーー起業はベトナムで?それとも日本でしょうか。
トゥク:どちらも経験したいです。日本とベトナムでは社会の成熟度や市場のスピード、フェーズも違うと思うので、そこはまだ考え中ですね。
ーー最後に、田嶋さんは学生時代から数々のAndroidアプリの制作をされてきたと聞いています。
田嶋:アプリからは離れてしまうのですが……僕はコンピューターがめちゃくちゃ好きなので、コンピューターを使って世の中の課題を解決するプロフェッショナルを目指しています。
DeNAに入社した理由に、事業領域が幅広く、さまざまな経験を積める環境があること。世の中にはさまざまな事業領域があり、その領域ごとに適したコンピューターの使い方があるんですよね。もちろん事業フェーズによってチーム構成や見るべき視点もガラッと変化する。
常に最適なソリューション提供できるプロフェッショナルになるのが目標です。あとは、IT産業の発展に寄与したい、という想いもあります。
ーー只見町の中学校でのIT教育もその一環ですか?
田嶋:はい。社内外を問わず、得た技術や知識を活用し、日本のコンピューター産業とソフトウェア産業のレベルを底上げする一翼を担うことができれば、と考えています。なので只見町での教育プログラムはすごく共感できるし、当面この活動は続けていきたいですね。
※本記事掲載の情報は、公開日時点のものです。
執筆:片岡 靖代 編集:若林 あや 撮影:内田 麻美