DeNAの新卒採用を担うヒューマンリソース本部人材企画統括部新卒部は、2022年9月にYouTubeチャンネルを開設しました。その名も『事業家のDNA〜事業家を目指すあなたへ〜』です。
事業家を目指す学生やさらなる飛躍を目指す事業家の方々に向けた“タメになる情報”を発信するチャンネルです。DeNA卒業生や社内の事業を推進する現役キーパーソンにインタビューを行い、最前線の情報をお届けしています。
採用部門による発信にも関わらず、採用情報はほぼ扱っていないというこのプロジェクト。新たにオーナーとして抜擢された寺本 百花(てらもと ももか)、施策の旗振りを担った陶山 拓也(とうやま たくや)に、プロジェクトの背景や経緯とともに、2人の今に迫りました。
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コンセプトは“事業家のDNA”を伝播させること
――企業が人事や採用についての動画を配信するケースはすでにいくつかありますが、このチャンネルは事業家を目指す方をターゲットとしているのが特徴ですね。
寺本 百花(以下、寺本):『事業家のDNA』は、事業家を志す就職活動中の方々やすでに事業家として活躍されている方々に向けて、DeNAがこれまで培い、蓄積してきた事業創造や運営経験の実践知について、理論だけではなく、情熱の部分も含めて届けることがコンセプトです。
DeNAの事業を推進している現役社員や退社後に起業した卒業生などの事業家をお招きし、事業にまつわるあらゆることを深堀りしたインタビューなどを配信しています。
――なぜ、そのような情報を発信しようと考えたのですか?
陶山 拓也(以下、陶山):DeNAが新卒採用をする意義から考え始めたことがきっかけです。昨年発表された「スタートアップ育成5か年計画(※)」にもある通り、社会にとって望ましい行動変容を促し、需要を創造しイノベーションを推進する事業家が、もっと社会には必要です。
DeNAは、エンターテインメント領域と社会課題の解決領域の両軸で、多数の事業を創出してきました。その過程で、株式会社ビビッドガーデンの秋元 里奈(あきもと りな)氏や株式会社YOUTRUSTの岩崎 由夏(いわさき ゆか)氏、株式会社ミラティブの赤川 隼一(あかがわ じゅんいち)氏などをはじめとした、数多くの起業家を輩出してきた実績もあります。
その一因として挙げられるのは、すでに事業家として成長した人を間近で見るという代理経験によって、「自分も事業家になれるかも」と思える自己効力感の増幅はもちろんのこと、DeNAに根付いているDeNA Qualityと、事業家として備えるべき素質との相性の良さが発端にあるのではないか、と感じていました。
DeNAの採用のアプローチとして、事業家の資質を備えた人材といかに出会い、活躍してもらうか。また掲げられたビジョンの実現に向かい、事業を推進できる人を一人でも多く増やすにはどうすればいいか。これらを踏まえて、今まではDeNAの中でしか行われていなかったことを社会に発信することで、事業家を志す方々のためになったり、選考で出会えたり、結果として日本に事業家が増える未来をつくれたらと考えたんです。
※……スタートアップ育成5か年計画。2022年11月に岸田内閣が発表した「新しい資本主義」の実現に向けて、革新的なスターチアップ企業を支援するための取り組み。詳しくはこちら。
――それで発信媒体として、『YouTube』を選んだのですね。
陶山:僕たちが出会いたいと思う採用候補者や事業家の方が高頻度で情報収集をしている、かつ現状DeNAがコンテンツを”提供できていない”メディアが『YouTube』である、という仮説を持っていました。
実際に仮説検証できたのは、2021年11月に行ったYouTube企画でした。株式会社ワンキャリアさんと「ONE CAREER FOCUS LIVE 」というDeNA社員、卒業生、入社内定者の方々を全部ごちゃまぜにして一気通貫で見せるライブ配信イベントを開催したところ、採用候補者の方々から結構な反響をいただきまして。
――手応えを感じられたのですね。
陶山:はい。「卒業生も現役生も真にフラットなDeNAのカルチャーに共感した」という声とともに、「内容だけでなく、話している社員さんの姿から、DeNAの雰囲気を掴むことができました」という声も多く、動画によってしか伝わらない情熱を伝える価値があると確信しました。この経験が『事業家のDNA』立案の種になったんです。
新卒一年目の強みを最大化、オーナーに大抜擢!
――寺本さんはまだ新卒一年目ですが、このプロジェクトにアサインされたのはある意味大抜擢ですよね。
寺本:新卒研修後の昨年4月にこの部署に本配属されました。新卒がHRに配属されるのは結構なレアケースだと聞いています。
そもそも私自身も事業づくりがやりたくてDeNAに入社しました。研修時に「PDCAを早く回せるようになりたいです。起承転結を任せてもらえて最速の成長ができる環境に置いてください」と訴えていたので、てっきりどこかの事業部に配属されるものと思い込んでいました。
結果配属先がHRで、それを告げられたときはショックのあまり号泣してしまったんです(笑)。
――寺本さんにどんな期待があり、HRに配属されたのか、説明はありましたか?
寺本:はい。このYouTube施策はHRにとって新しい取り組みで、起案から実現を経てフィードバックを受け、改善するまでの起承転結を自分で回せる、という意味での裁量権はしっかりと与える、と言われました。また、人を巻き込みながら推進する機会がどの部署よりも多いと。
そういう観点で当時の人事から見て、“私の強みをもっと伸ばせる場なのではないか”という判断があったようです。思い直してみると確かに私の希望は通っているし、説明を受けて俄然やる気が出ました。
――心機一転したのですね。最初に寺本さんが着手した業務は?
寺本:まずは自分の就活時を思い起こすところからスタートしました。
リサーチしていくと企業のHRが発信しているYouTube動画って、その企業にもともと興味がある人により好きになってもらうためのコンテンツがほとんどだったんです。採用候補者へ向けた認知拡大を目的としたチャンネルが圧倒的に少なく、今DeNAがやるならそこかなと。
事業創造についてのあれこれを発信し、「事業づくりっておもしろそう。DeNAってこんな会社なんだ」ということを知ってもらおう、という方向に狙いを定めました。社内の事例はたくさんありますし、これを活用しない手はないですよね。
陶山:起案から企画を練り上げ、一本目の動画を公開するまでの過程では、もちろん僕もかなりコミットしましたが、その後は寺本さんが中心となって推進しています。ポテンシャルが高くて、かなり早い段階でプロジェクトの主導権を寺本さんに渡すことができてとても頼もしかったです。
――ということは、すでに寺本さんがオーナーとなり、チャンネル運営されているのですか?
寺本:そうです。企画構成案の作成から取材対象者の選定と事前ヒアリング、本番インタビュー、編集チェック、動画公開と、たくさんの社内外の方々にご協力いただきながらチャンネルを運営しています。
陶山:DeNAでは「思考の独立性」という言葉をよく使います。誰かの話を鵜呑みにせずに自分自身でキャッチした一次情報に基づいて仮説を立て、思考を積み重ねていく能力を指すのですが、寺本さんは最初からこれをしっかり持ち合わせていた。
新卒一年目ですと、たとえば先輩社員から言われたことに対して疑わず、そのまま同意してしまうイメージがありますが、寺本さんにはそういうのが一切ありません。疑問があったとき、違和感をもったときは躊躇なく顔に出す(笑)。安心して任せられました。
――インタビュアーぶりも新卒一年目とは思えないくらい堂々としています。
寺本:ありがとうございます。実は誰をインタビュアーに据えるか、任命権は私にありました。画面に出るのはリスクがあるし、自分がやることに多少の抵抗も感じましたが、それでも出ようと思った理由は2つあります。
1つはチャンネルの方向性や各企画の考案など、一連の作業全てを私が担っていて、ゲストとの事前打ち合わせでその方の想いや考えも直接聞いているからです。一番高い解像度で熱量を持ってインタビューできるのはどう考えても私だな、と。もう1つはスピード感を大切にしたかった、ということ。あれもこれもやりたいことがどんどん生まれてくるんです。
日程調整や内容の共有コストなどを考えると、やっぱり私が担当するのが一番速いですから。
とてつもないDeNAへの愛を感じた。南場さんインタビュー
――配信をスタートしたのは9月ですね。5ヶ月ほど経過しましたが、反響はいかがですか?
陶山:直接宣伝を依頼していないにも関わらず、ベンチャーキャピタリストや外部のメディア編集者、経営者の方々がSNSで拡散してくださっていたりして、手応えを感じています。
たとえば南場さんの回をご覧いただいた方が、コンサルタント会社と事業会社の環境の違いについて感想を述べていたり、人材育成の回をご覧になって「自己効力感」を重視する思想について賛同をいただいたり。採用選考で「YouTubeを見ました」と言われることも増えましたし、届けたかった方々に着実に届いているな、と。
――それぞれ印象に残っている回を教えてください。
寺本:私は初回の南場さんの動画です。そもそも南場さんへのインタビュー企画を実現させるまでが本当に大変でした(笑)。撮影したあともなかなか首を縦に振ってくれなくて……。
陶山:事業家でありDeNAの顔でもありますから、最初はやっぱり南場さんに出てほしかったんです。
南場さんは新卒採用に関してのプライオリティがとにかく高くて、こういった企画の相談にはすぐ乗ってくれるのですが、一方で、採用候補者のために品質には徹底的にこだわります。YouTube動画で本当に価値ある動画が作れるのか、侃々諤々の議論を重ねました。
――南場さんは、やるからには良いものを届けたいという想いが強い印象があります。
寺本:そうですね。そのおかげで、事業家を増やしたいという想いは南場さんも同じなのだからこの施策はDeNAにとって絶対にプラスになるはず、確実に成功させるんだ、という信念をより強く持つことができたように思います。私たちの気持ちや考えを根気よく伝え続けて、なんとかインタビュー公開までこぎつけました。
陶山:動画撮影することが決まったあとも、「撮影してみて、出すか出さないかはクオリティ次第で決める!」と約束を交わして撮影に臨みました。動画に関わったメンバー全員の努力の甲斐もあって、最終的には「根負けした。出していいよ」となったので、終わりよければ全てよし、です(笑)。
振り返れば、寺本さんのグリッドの強さによるところも大きかったんじゃないかな。
寺本:実現できて本当によかったです!インタビュー中にウルウルしてしまうくらい南場さんのDeNAや社員への真摯な愛を感じることができたし、私自身DeNAを選んだことは間違いではなかった、と心の底から思えた企画でした。
――陶山さんはどの回が印象的でしたか?
陶山:『採用担当が絶対見ている3つのポイント』という動画です。
新卒内定者3名にディスカッションをしてもらい、採用担当がどういう視点を持って何を評価しているのか、をオープンにした企画です。この回は事業家を志す方の中でも、人事や採用担当の領域での事業推進を考えている方をメインターゲットとして整理した動画なんです。
この企画のきっかけとなったのは第3、4回目にご出演いただき、人材育成のノウハウについて語ってもらった僕の元上司、坂井 風太さんの『最強の人材育成』インタビューです。この企画は他社人事の方に好評で、組織づくりの観点において、貢献できるポイントがあることに気付けた企画でした。
それをもとに、ギリギリのラインまでDeNAの採用事情を開示してみたのが『採用担当が絶対見ている〜』の回です。いつもはインタビュアーをしている自分が発信する側になる、という意味でも印象に残っています。
『事業家のDNA』から、事業づくりへの目覚め
――スタートしたばかりではありますが、ここまでで得たものや感じているおもしろさ、難しさなどがあれば教えてください。
寺本:事業家と一口に言っても、携わる事業によって推進の仕方や向き合い方は千差万別で、インタビューする度に発見があり、とても刺激を受けています。同期の中でも一番!と自信を持って言えるくらい、私は仕事を楽しんでいます。
一方、インタビュアーとしての課題もたくさん抱えています。鋭い角度で突っ込んだり深堀ったりするのが難しいと感じていて……。ゲストさんがインタビューから新たな視点を持てたり、思ってもなかった気づきを得たり、そんな問いかけができるインタビュアーを目指して奮闘中です。
陶山:毎回、さまざまな角度から魅力的な方を社内外問わずゲストにお呼びしているので、シンプルに話がおもしろいし、楽しんでいます。
施策が走り出したときに、この『フルスイング』にも関わっている人材企画部の川越さんに取材のときに大切にしていることを伺ったところ、“メッセンジャー”として、話し手と読者の間に自分を位置づけることを意識していると教えていただいて。僕はそれを心がけるようにしています。
あとはゲストさんのお話に自分の解釈を臆することなくぶつけてみて、それが当たっていたら要約になるし、間違っていたらより正確な理解が得られる。結果的により深い実践知の獲得につながるので、そこはずっと意識しています。
夢中になって収録が長くなりがちですが、視聴者の目線を意識しながら短時間の動画で内容を端的にまとめなければいけないので、そのジレンマが難しいけれどおもしろいです。
――さまざまな事業家さんのお話を聞いていると、事業づくりへの熱に火が着くこともあるのでは?
陶山:実は、僕はこのYouTubeチャンネルを始めた後に異動願いを出しました。元々事業部から2021年4月にHRに異動してきたのですが、この施策を通して自分自身のキャリア観が変わったことが理由です。
新卒採用をする過程で知り合った方々を通じて、社内のベンチャー投資の部門に顔を出したりスタートアップや事業を見たりしていくうちに、自ら事業をやりたい気持ちが強くなりました。社内外の事業家の方と話をしていく中で、尊敬の念とともに、自分にもできるという想いが育ってきて。この1月にソリューション事業本部に異動したんです。
今後『事業家のDNA』は企画によっては出演することもありますが、一応、卒業という形になります。もちろんとても楽しいので、呼ばれたらいつでも出演します(笑)。
寺本:私もいずれは事業づくりに携わりたいと思っていますが、まだ一年目です。まずはこのチャンネルをプロダクトとして仕上げるのが当面の目標です。
――最後に、チャンネルが目指している展望を教えてください!
寺本:「事業家を増やす」という想いが太い軸としてあるので、その一助になるチャンネルを目指しています!事業家を目指す方のためになりたいという想いとともに、これを機に事業づくりに目覚める方がたくさん生まれるといいな、と思っています。もちろん、動画をご覧いただいてDeNAに興味を持ち、入社を志望してくれる方が増えると嬉しいです。
※本記事掲載の情報は、公開日時点のものです。
※本インタビュー・撮影は、政府公表のガイドラインに基づいた新型コロナウイルス感染予防対策ガイドラインに沿って実施しています。
執筆:片岡 靖代 編集:若林 あや 撮影:小堀 将生