DeNAメンバーが自ら率先して、会社をよりよくする施策を企画・立案・実行する『Delight Board(デライト・ボード)※』。今期、3期目は成果にこだわり、活動を推進中です。
社員から出された数々の起案の中から、事務局の審査で選ばれた3つのプロジェクトで参画メンバーを社内公募。多様なメンバーが部署や職種、世代を超えてつながり、全社的な課題と向き合うこの活動は、会社と関わるオープンかつフラットな場。入社間もないメンバーも手を挙げて参画しています。
「学び合い」「オンボーディング標準化」「新規事業創出」と、3つのプロジェクトにそれぞれチャレンジするメンバー、中川 尚人(なかがわ なおと)、窪田 瑞輝(くぼた みずき)、古川 真也(ふるかわ しんや)。参画メンバーかつ事務局メンバーでもある平子 裕喜(ひらこ ゆうき)を聞き手に、各プロジェクトの進捗、Delight Boardの活動を通しての気づきや自己成長について語ってもらいました。
※……Delight Board。DeNA20周年に実施された『De20(ディートゥエンティ)』というボトムアップで会社をよくする施策。その翌年に『Delight Board』に名称変更をして今回で3期目を迎えた。
新卒インターン生、管理職、入社直後の中途社員も参戦
平子 裕喜(以下、平子):第3期Delight Board事務局の平子です。
Delight Boardは今回で3期目を迎え、より推進力を効かせるために、まず事務局のメンバーが起案し、社員の皆さんからも募り、最終的に3案が選出されました。今日はDelight Boardについてメンバー3人に率直な感想を聞いてみようと集まってもらいました。
私個人だけでも約20のプロジェクトを起案しましたし、ものすごくたくさんの起案が集まった中から事務局側がどのように3つのプロジェクトを決定したのか。同じく事務局メンバーの中川さんから説明いただけますか。
中川 尚人(以下、中川):今期は“強い事業をつくる×魅力的な働く場をつくる”をテーマに、起案をいただきました。
選定のプロセスは、集まった起案を事務局が精査・選定をする方法を採用しています。具体的にはペイオフマトリクス(※)を使って絞り込み、さらに課題の大きさや全社影響も個別に事務局で精査・議論した上で最終的に3案に決定。基準を定め納得感のある選考プロセスを設計して、社内にも開示しながら進行しました。
※……ペイオフマトリクス。成果の大きさと遂行・実現性の2軸で起案をプロットし、遂行難易度と成果のバランスで絞り込む手法。
平子:我々事務局のコンセプトとして、意思決定基準も含めて情報をオープンに開示していくことを大事にしてきましたが、プロジェクトに参画する前の窪田さんと古川さんの目には、どう映ったか聞きたいです。
窪田 瑞輝(以下、窪田):組織をみんなでつくるいい会社だなと、少し他人事のように思っていたら、上長のnekokakさん(※1)に「君もやっていいんだよ」と。入社して1カ月後ぐらいで自分がオンボーディングを受けているところに、このDelight Boardの「オンボーディング標準化プロジェクト」に声をかけていただき、本当にいいんですかと喜んで参加しました。
自分のSlack Times(※2)でオンボーディングの本に関する実況をしていたので呼ばれたのかもしれません。
古川 真也(以下、古川):より経営のレイヤーに近い人たちが何を考えDeNAをつくっていて、その思想を事業にどう反映させるかのところを学べそうな印象が強く、社内のコアなソリューションへ自分も参加できることに惹かれました。
※1……nekokak。nekokakこと、小林 篤に関するフルスイングの主な過去記事はこちら(1/2)
※2……Slack Times。社内コミュニケーションツールのSlack内で個人が開設し、自由に発信・共有することが可能なチャンネル。
選ばれた3つのプロジェクトが、ボトムアップで進行中
平子:各プロジェクトの概要を紹介してもらいましょう。3つのプロジェクト全部で成果を出すために、6人の事務局メンバーが各プロジェクトに伴走しています。私は「オンボーディング標準化」に手を挙げましたが、中川さんはどういう想いで「学び合い」を選択したのですか?
中川:もともとは個人でロジカルシンキングの学習を起案していましたが、同じ事務局のメンバーがもっと広い概念の「学び合い」をやろうというので、そこにマージ(合併)してもらいました。
「学び合い」はDeNA社員が講師を務めるのがポイント。組織が大きいことで、社内のどこかにいるはずの専門家やすごい人と接点がないケースもあり、社員が交流も交えて“DeNAにいるすごい人”から横断的に学んでいけたら合理的だと考えたんです。
ハードスキルの研修コンテンツを制作して、社員が社員へ教えていきます。私の役割は講師のサポート。現在は先行版の6科目の講義をトライアル中で、ちょうど1回目の「考える技法」の講義を終えたところです。約170人の社員がエントリーしてくれました。
後にはファイナンス、ビジネスケース、マーケティングリサーチ、ビジネス法務のクラスが控えていて、「講師をやりたい」と部門長が手を挙げてくださっていたりもするんですよ。会社の中の事例が語られることも「学び合い」ならではです。
平子:講義の中で共通言語を獲得したことの証明として、受講した社内の「TALENTBASE(タレントベース)※」にバッジを実装することが検討されていたり、ロゴの作成をしたり、オリジナルノートの配布もしていますよね。
※……TALENTBASE。DeNA全従業員の顔写真と名前、所属部署などの情報が載った社内向けの社員データベースツール。TALENTBASEについて詳しくはこちら。
中川:「学び合い」プロジェクトには比較的シニア層が集まっていて、サービスやプロダクト開発に関わってきた経験や遊び心が発揮されていますね。
平子:「オンボーディング標準化」は、カスタマーサポートに所属するプロジェクトオーナー経験が全くない方が勇気を持って起案してくれました。採用者数が増えていく中で、オンボーディングプログラムの底上げをするために“標準”を用意し、各部門や組織開発の担当者に引き継いで、メンテナンスし続けることがコンセプト。理論体系をもとにそのタスクリストの作成を窪田さんがやってくれています。
窪田:組織開発論や組織心理学の分野から、ワークエンゲージメント(仕事に対してポジティブな感情を持ち、充実している心理状態)など、オンボーディングの学術的な概要をまとめ、論文や雑誌を読み漁っています(笑)。
“最低限度の守りたい部分を標準化”するガイドラインをつくるうえで、入社や異動で今までと違う文化に触れて起こるリアリティショックには、いい面と悪い面があると考えていて。
いいときは自分から関係性を変えていこうと気づける契機になりますが、悪ければ働きたくなくなり、会社を辞めたくなります。誤解を解いてこれから一緒に安心して取り組めることをどう伝えればいいかをまとめています。
平子:窪田さんはDeNAに入社して、リアリティショックがありましたか?
窪田:ありました!ここまで自発的に動いていいとは想定外でした(笑)。そもそも私はAndroidアプリ開発エンジニアとして採用されましたが、今はコードを書く必要がなくなったんです。予想していなかったことですが、今はエンジニアがコードを書きやすい場をつくることに専念しており、楽しく働いています。
DeNA入社以前までは、発達障害者がプログラミングを学べる就労支援施設の立ち上げに参画し、フランチャイズ化までをしていたこともあり、私にとって“場づくり”はライフワークのようなものです。
平子:プロジェクトで大事にしていることは?
窪田:理論だけでは浸透しないし、小さく進めてもスピード感が出ないので、拙速上等というか、一筆書きの精神ですね。トライアンドエラーを高速で進めています。
古川:「新規事業創造プロジェクト」では、0→1をつくるためには仮説検証を回していくことが大切だとメンバーみんなで考え、最近「DeNA Sprinters」にプロジェクト名称を変更しました。3つのプロジェクトでは一番の大所帯で、平均年齢が若く、私を含めて9人中3人がライブストリーミング事業から来ていて、アメリカでの起業経験のある人もいます。
起案の背景は、強い事業を社内から創出するために、課題として具体的なアクションを起こせる場づくりの必要性がありました。魅力的なDelight Boardの場と掛けて、DeNAメンバーの学びの場や人材育成、もしくはお祭りみたいにポジティブに楽しく、外向きに事業を創造できる環境をつくるというものです。
DeNAにとってバリューのある強い事業をつくるところをサポートし、かつ永続的に続くプロジェクトになるように設計しています。今はアイディエーション段階ですが、構想としては審査を踏んで、最終的に役員にプレゼンして、採択されれば事業化の可能性がある社内ビジネスコンテストに近いイメージです。
平子:古川さんはすごく積極的に手を挙げてくれていたこともあり、インターン生でありながら、『IRIAM』に出向中という特殊な立ち位置ですが、事務局メンバーが頑張って調整しアサインしたという背景があります。
古川:ありがたいです。学生時代に会社をやったりVCにいたり、それこそエンジニアをやっていた時期もあって、真っ新な状態から1をつくることが好きなんです。スタートアップとはまた違う、DeNAの中でGOサインの出るプロジェクトは、どういう規模感なのか?KPI設計でモデルケースをつくってやっていくのか?なども知りたくて。
新卒入社前のバリューも活かしたい想いで手を挙げました。新規事業としてやりたいアイデアがいくつかあるので、DeNA Sprintersの第1号案件になるかもしれないと、わくわくしています。
組織と制度へのチャレンジが、自分と事業の力に
平子:みなさんプロジェクトに参画してみて、自身の変化はありましたか。
中川:これまで事業に全振りしてきたので、コーポレートの活動や横軸での取り組みには縁遠いと感じていました。事務局メンバーに参画したことで、新しい観点が得られたし、それこそ一つの施策で会社を横軸に底上げできる活動が存在することがわかり、よかったですね。
平子:事業のプラスにもなっていますか。
中川:もちろんです。自分が事業部に提供したかったことを、「学び合い」として会社がやっているのでメンバーを巻き込みやすくなったのはすごくプラスです。
古川さんのプロジェクトは新規事業創出を出口としつつ、育成観点も考えられていることが素晴らしくて、夢がありますよね。DeNAで仕事をする価値の一つになると思います。窪田さんの「オンボーディング標準化」に至っては、自分が全然できていないのですごく期待しています。
窪田:私は会社の人になれた気がしています。自分のできる部分をやることが会社員だと思っていましたが、自分たちで会社をテコ入れしたり、お手入れしていいことに気づきました。
プロダクト開発部の人たちにもそれを伝えて、有志で自治会をつくり、活動を始めました。事業部や会社をこうしたいと、今いろいろな活動が立ち上がっているところです。「オンボード標準化」がケーキのスポンジだとすると、みんなでデコレーションして勝手に育っていくきっかけになれたかなと。
平子:窪田さんの話を聞いて、自分たちでやっていいという気づきがあるだけで自己組織化につながるし、DeNAという会社自体が自分事になると感じました。
窪田:組織が、部署が、上司が、ではなく、自分がどう貢献できるかに意識が変われば納得感も違ってくると感じています。プロジェクトに呼んでいただいて、きっかけがなければ自分もそうなれないと腑に落ちたので、この熱を他の人に伝えていきたいですね。
古川:私はまだ成果を得る体験をしていませんが、これまでの体感として言うと、これほど大きな組織で内部起案のプロジェクトを立てるのはすごく難しいと感じています。ゆえに、役員メンバーを納得させる観点を知ることができ、どんなプロセスを踏めばいいかの思考力がついたと思います。
DeNAの中で事業をつくることを考えると、なぜそれをDeNAでやるか?をすごく問われますが、プロジェクトに参画する機会を得て、答えを考えるうちにDeNAのカルチャーがわかってきました。ほかには、審査フローのたたき台をつくる中で、新規事業をつくる前段階の準備として数値を出すシードの大事さが個人的なスキルとして身に付いたので、『IRIAM』や今後DeNAで関わっていくプロダクト開発にも役立つのではないかと思っています。
平子:プロジェクト参画前とDeNAの印象が変わったことはありますか?
古川:大企業なので固いイメージもありましたが、入道雲のようだと思いました。層はすごく厚いけれど、雲だから上にすり抜けるのは簡単で、よりコアな部分に入っていける。そこが、実際に体験して知った事実です。
期待は大きく、課題も大きい。だから、熱を伝えて動かす
平子:今期のDelight Boardは成果にこだわっています。「オンボーディング標準化」は、つくったものを実際に今年入社した方の部署で使ってもらい、HRでよりよい体制を組もうと話が進んでいます。「学び合い」においても効果の指標が取りやすいですよね。「DeNA Sprinters」は特殊で、この仕組みが会社の制度として受け入れられるかが一つの成果になってくると思います。
最後にみなさんの期待と課題を教えてください。
古川:期待するのは「DeNA Sprinters」が社内文化になることです。願わくば『Pococha』のようなビジネスが出てきたら、その根本を設計できた強い体験になるし、新規事業を社内でつくっていく気運が高まり、年1回の恒例行事として盛り上がれるかなと。
これから感じるであろう課題としては、想定した熱量のあるイベントが実際に社内に浸透していくのか。そして、熱量高くチャレンジしたい人が、「DeNA Sprinters」の制度を使ってくれるかどうか。できるだけ確度高く仕込んでいますが、社内熱量をいかにお祭り状態にできるかは、やってみなければわかりません。やった後に文化を継続していくための課題を改善していくことになると思います。
平子:熱の伝播がテーマになりそうですね。
窪田:期待は「オンボーディング標準化」を受け入れてもらえるようにすること。そして、そのほかの課題感も会社に提案できるんだと、受け入れてもらえるようにすること。何かが足りていないように感じるのは、たぶん“型”がないからだろうと思っています。
たとえば、学術的事実だったらアカデミアで受け入れられる仕組みがある。論文を書いて査読され、学術誌に掲載されることで科学的事実として認められるフローが明確になっているんです。こういう型を真似できればなと。
そういうフローをどう整備をしていくかが今後の課題かもしれません。フローができて、経営層、現場、株主の方に納得感があれば、受け入れられると思うので、それをつくりたいです。
平子:それいいですね。つくりましょうよ(笑)。
中川:この活動を通して、いろいろなタレントが社内の方々から出てきて講師になり、教わった人が教え合い、人を誘ってくる。そんなコミュニティで一緒に学び、切磋琢磨していく熱量がすごく好きです。目線を上げるだけではなく、実行に至る環境づくりを今後できるとやりがいがありますよね。
ユニークな窪田さんや事業部が違う古川さんとは、DelightBoradに参加していなければ接点がなかったかもしれません。一緒に参加した事務局のメンバーもすごくて、そういう人たちとのコラボレーションは日々の業務だけでは味わえない。DeNAのみなさんにDelightBoredへもっと興味を持ってもらいたいし、参加者をどんどん増やしていきたいです。
平子:事務局としては今が正念場。Delight Boardを意義のある取り組みにするために熱量を持ち続けたいですね。本日はありがとうございました!
※本記事掲載の情報は、公開日時点のものです。
※本インタビュー・撮影は、政府公表のガイドラインに基づいた新型コロナウイルス感染予防対策ガイドラインに沿って実施しています。
執筆:さとう ともこ 編集:若林 あや 撮影:内田 麻美