2017/12/19

「お客さまを自宅に招いて、本音を聞いた」Anycaの育ての親、浅岡亮太流コミュニティマネジメント術

「良質なお客さまのコミュニティを作りたい」

そう考えている事業担当者はきっと多いのではないでしょうか。特に、CtoCのサービスを担当されている方は、その想いがとても強いはずです。

 

CtoCサービスのUXを向上させるには、サービス“単体”の品質を向上させるだけでは不十分。利用者であるお客さまの“コミュニティ”を育て、良質なものにしていくことが、良いUXを生み出すために必要不可欠です。

 

今回登場するオートモーティブ事業本部カーシェアリンググループの浅岡 亮太(あさおか りょうた)も、Anyca(エニカ)(※1)のコミュニティ形成に“フルスイング”してきました。彼はAnycaの立ち上げメンバーとして、初期の会員獲得やコミュニティマネージャー(※2)を担い、現在はカーシェアリンググループでセールスマネージャーを務めています。

 

高校時代にボクシングの全国大会で優勝したという異色の経歴を持つ浅岡。彼はいかにして、Anycaをグロースさせてきたのでしょうか? そのキャリアからは、“人とのつながり”を何よりも大切にする彼の哲学が垣間見えました。

 

※1…“乗ってみたい”に出会えるカーシェアリングアプリ。個人間でクルマをシェアする新しいカーシェアリングサービスで、スポーツカーから痛車まで、全国オーナーの多種多様なクルマを利用することが出来ます。
※2…オンライン・オフラインのさまざまなコミュニケーション手段を活用し、企業やサービスのPRやブランド力の向上、利用者コミュニティの醸成などに寄与する職種。

 

オリンピックへの夢破れ、車と美女に心血を注いだ大学時代

——どのような経緯で、浅岡さんはAnycaの立ち上げメンバーになったのですか?

 

浅岡:もともと僕は、小学生の頃からボクシングをしていました。高校時代は、全国大会で優勝して、その勢いでオリンピック選手を目指していたんですけど、結局夢破れてしまい。何を目標にしていいのかわからなくなってしまったんです。

 

それで、あらためて自分のやりたいことについて考えたんです。僕の実家は古いヨーロッパ車を扱う専門店(アウトレーヴ)だったので、「そうだ、車に関することをやろう」と思ったんですね。

 

それで、昔から好きだった「車」と、当時流行っていた「美女コンテンツ」という要素を組み合わせて、大学在学中に車のWebメディアを立ち上げました。「好きなものを混ぜちゃおう」みたいなノリで始めたんですけど、地道に続けていたらSEOで上位がとれるようになって。それがたまたまDeNAのAnyca事業責任者の目にとまり、話をしたのがジョインしたきっかけです。

 

オートモーティブ事業本部カーシェアリンググループ 浅岡亮太
高校時代にボクシングで全国優勝、大学在学中にクルマ系メディアを立ち上げ、2015年4月にDeNAに新卒入社。Anycaの立ち上げメンバーとして初期のお客様の獲得や、コミュニティマネージャーとしてお客様に寄り添った質の高いサービス・コミュニティ作りに貢献。現在はセールスマネージャーとして、企画営業をメインに、アライアンス、ローカルマーケティング等の業務に従事する。大のクルマ好き。一児のパパ。

 

——もともとコンテンツ作りやメディア運営には興味があったんですか?

 

浅岡:全くなかったですね(笑)。普通の体育会系の大学生だったので、もちろんそれまでビジネス経験もなく、何の知識もないところからのスタートでした。車メディアも「とりあえず面白そうだからやってみよう」くらいの気持ちで始めたんです。でも、メディアのテーマが自分の好きなことだったので、すぐにのめり込みました。おかげでPVがどんどん上がっていって、手がけたコンテンツが多くの人に届く楽しさに気づいたんです。

 

「Anycaには面白い車がある」というブランディング

——Anycaチームに配属されてから、まずどんな仕事を任されましたか?

 

浅岡:「既存レンタカー・カーシェアサービスに登録されていない車を200台Anycaに登録すること」が、最初に任されたミッションです。Anycaは2015年9月に立ち上がったんですが、僕が入社した2015年4月の段階ではアプリがまだ完成していなかったので、初期のお客様を獲得するところからスタートしたんです。

 

Anycaリリースの3か月くらい前は、登録台数が足りなくって……。とにかくいろんな人に「登録してください」って頭を下げて回りました。なんとか200台集めてリリースに間にあったんですけど、周囲からは「スマートな印象のあるDeNAっぽくないね」って散々言われましたね。それぐらい、立ち上げ当時は泥臭いことをやっていました。

 

——なぜ、既存レンタカー・カーシェアサービスに置いてない車を集めたんですか?

 

浅岡:「Anycaって面白い車があるよね」と思ってもらうためです。サービス初期フェーズでは登録台数や利便性といった点では、既存のBtoC向けレンタカーサービスに勝つことはできません。なので、差別化のために「車好きの方が利用したくなること」を意識して取り組んでいました。

 

——つまり、「ニッチなニーズを持つお客さま」をターゲットにしたわけですね。

 

浅岡:結果的に、痛車やクラシックカーまでの車を、リリース時に200台集めることができました。おかげさまで、立ち上げ当初から車好きの方を惹きつけることには成功したのかなと思います。

 

お客さまと本音で語り合うため、自分の家に招待した

▲Anycaは、良質なコミュニティを形成するために多種多様な手法を用いた。

 

浅岡:今でこそ徐々に「コミュニティマネジメント」というワードが浸透してきていますが、当時はそんな言葉もない時代でした。なので、相談する人も思い当たらず、とにかく仮説を立ててはやってみるということを繰り返していました。

 

――具体的には、どんな施策を?

 

浅岡:初期の頃にやっていたことを、いくつかピックアップして解説すると、「サービス説明会」。Anycaはわりと仕様が複雑なサービスなので、「お客さまがアプリに対して持っている疑問を解決してあげなければ、なかなか使ってもらえない」という実利的な観点で開催しました。時には、既存のお客さまにご協力いただき話をしてもらうこともありました。

 

それから、「車の撮影会」。サービス開始以来、ほぼ毎週開催しているイベントです。プロのカメラマンをアサインして、お客様の車を無料で撮影しています。地道ですがクオリティの高い写真が並んでいるとサービスの印象も変わりますし、撮影中のお客様との会話時間も大切にしています。

 

DeNAのスタッフとお客さまが対面で「この車いいですね」なんて会話をするので、よりフランクな関係になれるんです。また、お客さま同士のコミュニケーションも生まれるので、それを通じてAnycaのコミュニティが徐々に形成されていく、という効果もあります。

 

▲Anycaの各種イベントで使われたという、顔はめパネル。

 

――大事なのは、人と人との交流の“機会”を作ることなんですね。

 

浅岡:そう思います。というのも、今って、自分含め車好きにとって肩身が狭い感じがありますよね。

 

――それはどうして?

 

浅岡:自分の親世代とかは、車を所有することが当たり前かつ、ステータスであったと思うのですが、今って「車=コスト」みたいな印象が強い気がするんですよね。特に若者世代にとって。その結果、車好きの人であってもマイノリティーな気がして、「自分は車が好き」って明言しづらくなっているんじゃないかなと。でも、車好き同士で集まれるコミュニティがあれば、居場所ができて素直に語り合える仲間もできるじゃないですか。

 

――「仲間がほしい」というニーズがあるからこそ、コミュニティを作ることの意味がある、と。

 

浅岡:そうですね。実際に僕自身も車好きの方との交流を深めるために、車に関するイベントやオフ会などに積極的に参加していました。

 

そうしていくうちに、「さらにAnycaを好きになってもらうためには何をすればいいのか」という想いが芽生えてきたんです。そのために、お客さまをDeNAの会議室に招いて口頭でのユーザーヒアリングを実施したんですが、これが全然上手くいかなくて。

 

――それはなぜ?

 

浅岡:みなさん、「大きい企業の会議室に招待されたから、ちゃんとしたことを話さないと」と緊張して、建前しか喋ってくれなかったんです。そこで、「どうすれば本音を喋ってもらえるだろう」といろいろ考えた結果、行き着いた答えが「僕の自宅に招待すること」でした(笑)。もちろんその前の段階としてイベントや飲み会などを挟んでいますが。

 

——「サービスのお客さまを自宅に招く」ってすごいアイデアですね。

 

浅岡:「対・お客さま」として考えると異例のことかもしれません。でも、誰かと友だちとして仲良くなりたいときって、一緒に飲みに行ったり、家に招いたりするじゃないですか。

 

僕は、Anycaを利用してくださる方を、「1人のお客さま」というよりも、「1人の車好きな仲間」と考えていました。だから、自宅に招くのもごく自然な流れなんですよ。

 

▲お客さまと一緒にキャンプに行ったときの写真

 

温かみのあるつながり”こそ、Anycaが目指した世界観

——1人の車好きな仲間。その言葉に、Anycaのコミュニティ形成のコンセプトが表れていますね。“温かみのあるつながり”が大事というか。

 

浅岡:そうですね。Anycaのコミュニティマネジメントでは、まさに「人のつながり」を重視して、施策を決めていったんです。

 

例えば、説明会などでPRする際にも、「車をシェアしたら○○円維持費軽減できますよ」という話だけでなく、「車を通じた、温かみのあるコミュニティがあるんです」という打ち出し方を意識しました。そうすることで、そういった部分に共感してもらえる人達にとって居心地のいい空気感を作っていました。

 

コミュニティマネジメントで大事なことって、「最終的には、お客さま自身が、運営者と同じレベルでサービスのことを愛してくれて、その熱量を発信してくれる状態」を目指すことだと思うんです。そのためには僕らが「いいサービスですよ」って一方的に発信するだけではダメで、お客さまに「居心地のいいコミュニティだな、他の人にも教えてあげたいな」と感じてもらう必要がある。その状態を実現するために、何をすべきかを決めることが大切だと考えています。

 

その意図を持ってコミュニティ形成をしてきたので、Anycaって車のオーナーと利用者の仲がすごく良いんですよ。2者間で、「お土産を買ってきたのでよかったらどうぞ」とか「家族同士で今度遊びに行きましょう」といった交流が生まれるケースもたくさんあります。中には一緒に起業しましたなんていうことも(笑)。そういうエピソードを聞くと、すごくほっこりした気持ちになって、「色んな施策をやってきて良かったな」と思うんです(笑)。

 

もはや、お客様自身がコミュニティマネージャー

——コミュニティが育ってきてから、実施する施策の内容は変わりましたか?

 

浅岡:変わりました。わかりやすい事例は、「ユーザー企画型イベント」かなと。これは何かというと、Anycaを利用してくださっているお客さまが自発的に企画・運営するタイプのイベントです。

 

——ユーザー企画型のイベントってどんなものがあるんですか?

 

浅岡:今一番盛り上がっているのはカートレースですね。お客さまが自分たちで「Anyca1グランプリ」と名付けた大会を開催して、上位入賞者にはトロフィーまで渡しています。運営してくださっている方々が、参加者にSNSでの拡散を呼びかけたりして、僕らよりも積極的に発信してくれています。

 

——そのフェーズまで行くと、もはや「お客さま自身がコミュニティマネージャー」ですね。

 

浅岡:まさにそうです。それこそが僕らが目指すべき姿で、今はまさにそのフェーズに突入しているところ。全国各地にいるお客さまが自分たちでコミュニティを盛り上げてくれるような、そんな世界が広がりつつあります。

 

それから僕たちは、「Anyca STORIES(https://anyca.net/campaign/stories)」というオウンドメディアも立ち上げました。このメディアを通じて、Anycaで生まれた素敵なストーリーを発信しています。これも、Anycaのコミュニティが醸成されてきたからこそ、実現できたこと。

 

▲カーシェアを通して生まれた想い・体験を届けるメディア「Anyca STORIES」。

 

こうしたオンライン・オフラインの取り組みを通じて、「Anycaを通じて生まれた想い・体験」といったコンセプトを発信し続けているんです。

 

——Anycaが良質なコミュニティを作ることができた。そのコツって何だったんでしょうか?

 

浅岡:「量より質」という考え方をリリース初期の段階で徹底できたことだと思います。

 

というのも、Anycaはあくまでプラットフォームなので、最終的にサービスの価値を決めるのは車のオーナーと利用者間で生じる「シェア体験」です。どちらかの意識が欠けていると、シェア体験は悪くなってしまいます。

 

だからこそ、オンライン・オフライン問わずAnycaが目指す世界観を一貫して伝えてきました。オフラインイベントの実施回数も気づけば200回以上やっていますね。そういった積み重ねが、今の質の高いコミュニティ形成に結びついたのかなと思っています。もちろん、一番は、質の高いシェア体験を生み出してくれているお客さま全員のおかげなんですけどね。

  

ボクシングが教えてくれた「みんなのために頑張る」意義

——最後に聞きたいのですが、学生時代にやっていたボクシングとビジネスの共通点ってありますか?

 

浅岡:たくさんありますが、一番は「準備」の大切さだと思います。僕は小学生の頃からボクシングをやっていたこともあって、期待されて高校のボクシング部に入り、すぐに結果が出るだろうと周りからは期待してもらっていました。でも結局は、高校3年生まで全国大会で1回も勝てなかった。そのとき、足りないところを悶々と考え続けた結果、自分には圧倒的に「準備」が足りていないということに気づきました。

 

高校3年からは心を入れ替え、対戦相手の分析や、その相手を想定した練習を一から組み直すところから始まり、減量方法もトーナメントで戦うことを意識して一ヶ月かけて少しづつ体重を落としていくスタイルに変えたり(それまでは3日で6kgほど落としていました(笑))等々、フィジカル・メンタル準備を徹底的に行ないました。

その結果、高校最後の国民体育大会で、やっと日本一になれました。

 

ビジネスにおいてもボクシングで培った準備への意識が活きています。

 

▲高校時代の浅岡。

 

——ボクシングで培った価値観が、今の浅岡さんを支えているんですね。

 

浅岡:そういう意味では、「コミュニティを作る」という仕事にフルスイングできたのも、ボクシングで得た価値観があったからこそ、だと思います。

 

——というと、どういうことですか?

 

浅岡:実は高校3年生の最後の全国大会で優勝した瞬間、実はあまり嬉しくなかったんです。むしろ、県大会で初めて優勝したときのほうがずっと嬉しかった。

 

でも、日本一になったときに、リングを降りると、親や友だち、ボクシング部のメンバーたちが、今までにないほど喜んでいた。そのとき初めて、「日本一になってよかった」と心の底から思えたんです。リングの上で手を上げられる喜びが10だとしたら、リング下でみんなを見た喜びは1億。そのくらい、嬉しかった。

 

そのときに、「ああ。自分がやったことで周りの人達が喜んでくれるって、こんなに嬉しいことなんだ」って思ったんですよ。だから仕事においてもプライベートにおいても、当たり前なことかもしれないですけど、「周りの人にどう喜んでもらえるか」というのを一番に考えるようにしています。

 

コミュニティを作り上げる仕事ができたのも、セールスマネージャーとして法人向けの営業・アライアンス等を推進できているのも、ボクサー時代の決して忘れることのない原体験があったからだと個人的には思っています。これからも「Anycaを通じてより多くの人達に、より多く喜んでもらうには」というシンプルな問いを、自分に問い続けたいと思います。

 

フルスイング編集部
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